国民投票法案「ここが問題」!
長尾 詩子

第1 国民投票法案が出てくる背景
 憲法を変更するには、@改正案が国会に提出 →A衆参両院で審議し、それぞれ総議員の3分の2以上の賛成で議決 →B国民に提案(発議)されて、国民投票で過半数の賛成で承認されることが必要です(憲法第96条)。つまり、国民投票は憲法を変更するための最後の関門なのです。
 ところが、これまで国民投票の手続きは法律では定められていませんでした。
 改憲派は、「法の不備はすみやかに直さなければならない」と、国民投票法の必要性を訴えています。
 改憲派が国民投票法を必要だと急ぐ理由は、手続きをきちんと定めておいていつでも憲法を変えることができるようにするためです。
 ですから、今、国民投票法が必要かどうかを判断するためには、改憲派が描く憲法「改正」の内容に賛成するのかどうかという点は大きいと思います。
 ただ、今与党協議会から提案されている「日本国憲法改正国民投票法案」(以下「国民投票法案」といいます)は、手続き法自体としても多くの問題点を抱えた法案です。以下、この問題点についてコメントします。

第2 国民投票法案の内容
 国民投票法案の内容の概略は以下のとおりです。
 (1)国会の発議後、30−90日の投票運動後、国民投票を行う。投票運動については一定の運動は禁止される。
 (2)国民投票においては、1.投票権者は20歳以上 2.投票方法は国会の発議で一括か個別かを決める 3.有効投票の過半数で承認とする
 (3)国民投票後30日以内に東京高等裁判所に訴訟をしなければ国民投票無効訴訟は提訴できない

第3 国民投票法案の問題点
1 投票方式について
 −「環境権には賛成だけど9条変更には反対」という声は反映できない!
 最も問題だと言われている点は、一括投票か個別投票かという点です。
 一括投票とは、「改正」案全体に対して○か×を記入する方式です。一方、個別投票とは、条文ごとに○か×かを記入する方式です。
 憲法「改正」についてのアンケート調査をみていると、「環境権を定めることには賛成だけど9条変更には反対」といった人が多くいます。一括投票の場合には、このような人の声は全て無視されることとなります。個別投票で、環境権の条文には○、9条には×を記入することで正確な声が反映できるのです。
 国民投票で国民の声を正確に反映するためには、個別投票であることが必要です。
 しかし、国民投票法案は、一括投票ができることとなっています。
 自民党が発表した新憲法草案は、まさに現行憲法とは全く異なる思想の上に作成  された現行憲法を全面的に変更する案です。しかも、世論からも上記のように個別  条文ごとに賛成反対は異なる人も多くいます。全面的変更案について国民世論を無  視して一括で、「○か×か記入しなさい」というのはあまりにも乱暴な議論です。

2 周知期間について
 −1−2ヶ月では憲法について国民的討論ができない!
 国の最高法規である憲法を変えるかどうかについて、国民は十分にマスコミや政党などから情報を得て十分に考えた上で投票することが必要です。
 しかし、国民投票法案では周知期間が1ー2ヶ月となっており、短すぎます。これでは国民が十分に議論しないままに国民投票が行われ、多くの国民がよくわからないから×を書かなかったという消極的な承認で憲法が「改正」されてしまうという大変な事態がおきてしまいます。
 しかも、次項でご説明するとおりの緩やかな基準では、すぐに過半数の承認ができてしまうことを考えても周知期間の短さは大変な問題です。

3 過半数の基準について
 ーあっという間に過半数承認ができてしまう!
 国民投票法案は、過半数の基準を有効投票の過半数とします。しかも、最低投票数は定めていません。
 選挙の投票率は年々下がっていて多くの国民が参加しているとはいえない状況です。
 このような状況を前提に、最低投票数を決めない有効投票の過半数を過半数の基準とするのでは、実際には少ない国民の承認しかなくても、あっという間に過半数承認となってしまいます。
 憲法がこの国の在り方を決める最高法規であることからは、簡単に承認ができないようにするべきです。例えば、有権者数に比した最低投票数を定めて、投票総数の過半数を得なければ承認としないとすべきではないでしょうか。

4 マスコミへの規制
 ーマスコミが自由に報道できない!
 国民投票法案は、投票運動期間中、マスコミの虚偽報道は禁止することを定めています。
 選挙の場合に候補者の経歴についてウソを書いてはいけないことは当然でしょう。
 しかし、どのような国をめざすのかという憲法の議論の場合、色々な考え方があり、ウソの考えというものはありません。虚偽報道ということは考えにくいのです。
 むしろ、マスコミが虚偽報道にかこつけて報道を禁止されないかと、憲法について積極的に自由な議論をしなくなってしまうことが心配です。そうなってしまったら、私たちはマスコミから様々な議論を十分に聞いた上で自分の考えをまとめるということができなくなってしまいます。
 20日の衆院特別委で作家の吉岡忍氏は「規制は憲法論議を萎縮させ、国民の関心を低下させる危険性がある。」と主張しました。全くそのとおりだと思います。

第4 最後に
 憲法は国の在り方を決める最高法規です。このような憲法を変えるかどうか、そしてどう変えるか、国の主人公である国民が決めることです。
 そのためにも、国民投票は、国民の声が最も正確に反映される投票方法であることが必要です。
 しかし、国民投票法案には上記のとおり多くの見過ごせない問題点があります。
 このような国民投票法案に対して、多くの大田区民のみなさんと「ノー」の声をつきつけていきたいと思います。

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